第二部 課題創造とは

第二部 課題創造とは

 ここでは、弊社の社名の由来となった「課題創造」について考えます。

第五章 課題の定義

 課題の定義を次の3点(① 問題 vs 課題、② 問題を解決するための課題、③ 問題の存在を前提としない課題。)から考えた結果、弊社は、課題を「事態をより良くするために実施する事柄(の全体像)」と定義します。

(1) 問題vs課題

 弊社は、ビジネスの場面と同様に、「事態をより良くするために実施する事柄」として課題をポジティブに捉えます。

 なお、その具体的内容の多くは、「問題を解決するためのものであり、達成すべきもの」と考えられているようです。

(2) 問題を解決するための課題

 課題の具体的内容の多くは、「問題を解決するためのものであり、達成すべきもの」と考えられている点は既に指摘した通りです。

 また、常に、課題設定の前の「問題はそこか?」の自問自答は不可欠と考えます。

(3) 問題の存在を前提としない課題

 問題の存在を前提としない課題を生み出す原動力は、変化? 刺激? 選択可能性?

 弊社は、課題を「事態をより良くするために実施する事柄」と考えており、問題を前提としない課題は、さらに、人と社会に活力をもたらす事柄と考えます。

第六章 課題解決、課題発見、課題創造のプロセス

 「問題を解決するための課題」と「問題の存在を前提としない課題」をその生成プロセス毎に分解し、次の3種類(① 課題解決の対象、② 課題発見の対象、③ 課題創造の対象)に分類し直しました。ここでは、解決、発見、創造の各プロセスについて検討しました。

 課題解決、課題発見、課題創造の各プロセスを研究開発あるいは事業における戦略として考え整理してみました。

(1) 課題解決のプロセス

 ここでは、課題解決の方法をざっくり3種類に分類してみました。

隙間

顕在解決方法

 全てのプロセスを既知の範囲で行います。

白段落

潜在解決方法

 未知だった解決方法を見つけて実施するプロセスを示しています。課題を検討して、問題点ではなく、解決方法を見つけ出す場面は、技術的な課題の解決を想定しています。

 現実には左の図のようなプロセスを経るものと考えられますが、図が煩雑になりますので、上図では、要点だけを結びました。

白段落

深部潜在解決方法

 未知だった解決方法の実施に当たっては、既知の範囲で充分可能とも考えられますが、解決方法について特定しておりませんので、ここでは、未知だった事物の範囲に示しております。

 潜在解決方法と同様に、現実には左の図のようなプロセスを経るものと考えられますが、図が煩雑になりますので、上図では、要点だけを結びました。

白段落

(2) 課題発見のプロセス

 

 課題発見と表記しましたが、積極的に探しますので、ここでは、課題探索と言った方が良いかも知れません。 

 探しに行く場所は、既知の定義・解釈・ビジョンと実社会の2箇所です。

隙間

潜在課題の発見

  既知の定義・解釈・ビジョンへ探しに行きます

白段落

深部潜在課題の発見

 実社会へ探しに行きます。

(3) 課題創造のプロセス

 課題創造は、元々、構図①→②→③(① 眼前に横たわる課題を解決する(課題解決)→② 存在はしているが、その存在を知られていない、あるいは何処に在るのか知られていない課題を発見し解決する(課題発見)→③ であれば、次に来るのは、存在すらしていない課題をつくり実現(解決)する(課題創造))で考え出したものです。

 課題創造は、「解決する課題」と言うより、もっと積極的に「実現させる課題、実現させたい課題」をつくり出します。

課題創造法

 先の「創造的課題解決」や「創造的課題発見」との決定的な違いは、課題創造では、定義・解釈・ビジョンを見いだすところから始める点です。

隙間

 「課題創造の棚」と「問題の存在を前提としない課題の棚」の内、課題創造の対象に分類される課題を並べてみました。創造の第一段階である「未知だった定義・解釈・ビジョン」の発明/発見が、課題創造の要となることを発見しました。

課題創造のまとめ

 上記の「問題の存在を前提としない課題の棚」と「課題創造の棚」の棚を一つにまとめてみました。なお、棚表示板の内容と棚の順番を整理しました。

 また、この図では「人と社会の目的」として目的の棚板に弊社が掲げる「活力ある人と社会の持続」を記載しました。

第七章 課題創造の再定義

 上記のpdfファイルは、2017年に弊社サイト「定義と解釈」に掲載した「課題創造」とは(第1版)です。第一版の定義で「全く新しい」を使っていますが、弊社の使い分けは伝わっていなかったと考えています。そこで、考えがより正確に伝わるように、課題創造を再定義しました。

(1) 課題創造の再定義

新しいと全く新しいの違い

 弊社では、創造の二段プロセスの一段目に得られたものを「新しいもの」、その「新しいもの」を使って得られた二段目のものを「全く新しいもの」と使い分けています。

隙間

課題創造の再定義

 再検討の結果、弊社は、課題創造を以下のように再定義します。

 新たに発見や発明された定義・解釈・ビジョンを糸口とした、新しい「人と社会」をつくり出す課題の発見や発明。

 前章の再掲載となりますが。「創造的課題解決」や「創造的課題発見」との決定的な違いは、課題創造では、定義・解釈・ビジョンを見いだすところから始める点です。また、この図では「人と社会の目的」として目的の棚板に弊社が掲げる「活力ある人と社会の持続」を記載しました。

第八章 課題創造と得られた課題の実現プロセスに不可欠ないくつかの概念

 課題創造の第一段階における自問自答の答えが何であれ、それを基に課題を創造し、実現していくには、いくつかの条件とそれらの条件を満たす社会環境が不可欠と考えます。弊社は、満たすべき条件として「四つの安全と一つの安心」を提案し、さらに、社会環境が具備すべき要件として、リングモデルの活用とGOTの組み込み、厚生製品学と厚生未来学の構築を提案しました。

 なお、弊社は、技術分野における安全と安心を、ユーザーインターフェイス、ユーザーエクスペリエンスおよびユーザーパースペクティブの観点から、技術が人間に及ぼす影響を念頭に考え、人間を中心に置く四つの安全と一つの安心を提案しております。

(1) 四つの安全と一つの安心

四つの安全

 一つ目は身体の安全で、怪我や病気、死などからの回避、二つ目は精神の安全で、心の病、恐怖、ストレスなどからの回避、三つ目は能力と機能の安全で、人間が本来身に付けうる能力の喪失からの回避、四つ目は尊厳の安全で、人間を取り巻く機械との関係において、人間が機械に従属したり、社会が人間を機械のように扱う状況からの回避です。

一つの安心

 安心は、現時点の自分から離れた場所と時間において、これら四つの安全が保たれることです。  安心は基本的に時間の観念を含んだ概念であり、私たちが安心と言う言葉を使う時は、将来にわたって、安全が確保される時ではないでしょうか

(2) 特に、人間の尊厳の安全

弊社では、『人間の尊厳の安全』を、当面、

 人間を取り巻く機械との関連において

  1. 機械は、いかなる時も、人間の使用する単なる道具にすぎない。

  2. 従って、人間が機械に従属することは、決してあり得ない。

  3. 同時に、社会は、決して人間を機械のように扱わない

の3点が破られる危険がないこと と定義します。

(3) リングモデルとGOT

リングモデル

 イノベーションの『リニアモデル:①~⑧』の両端に研究対象と営業対象を書いて、両端の『人間/社会/市場』を重ねたら、余分な構成要素が一つぶら下がった『リング』ができました。弊社は、これを「リングモデル」と名付け、全ての企業にこの推進を提案したいと考えます。

GOT

 弊社は人と社会への提供の是非を問う仕組みとして、Governance on Technology(GOT)を構築したいと考えます。GOTはMOT(Management of Technology:技術経営)をもじって弊社が付けた名前で、MOTが科学的知識や技術的知識の管理・運用方法を扱うのに対し、GOTは、新技術の監視、検証、チェックを目的とし、技術アセスメントを内蔵する概念です。

隙間

 この図は、リングモデルの有効活用を念頭に考え出したもので、リニアモデルの要素を三つずつ束ねる形でリングの外からコントロールする仕組みを表しています。

(4) 厚生製品学と厚生未来学

厚生製品学

 「厚生製品学」は弊社の造語で、製品・サービスから観た「より良い生活」を明らかにする知識体系と定義しました。「より良い生活」とは何かを様々なデータに基づいて探っていきます。

「厚生未来学」も弊社の造語で、厚生経済学を参考に決めました。

 未来社会を企業から提供される製品・サービスの観点から考察する知識体系であり、厚生製品学、GOT、リングモデルをキーワードとします。

第九章 課題の実現プロセス

(1) 課題の実現プロセス

 第四章の(5)において、新たに得られた「もの」を「物」や「モノ」として具体化する「実現プロセス」について簡単に触れました。そのプロセスは課題の実現においても同様ですが、課題の実現においては、「厚生未来学」が最も重要と考えられます。

 弊社は、課題の実現に使われ厚生未来学が重要視されるトグロを、特に「課題の実現プロセス」と呼ぶことにします。

隙間

第十章 世の中の定義と弊社の定義の比較検討

 上記のpdfファイルは、2021年以前に弊社サイト「定義と解釈」に掲載した「創造」とは(第6版)です。古い内容で、概念の棚ではなく、概念のビルディングを使っています。世の中の創造の定義の分類も今回の内容とは違っています。さらに、「創造」や「創造の方法」の文章による定義も異なっていますが、「深部潜在概念の顕在化」を初めて提案した版です(本質にぶれは在りません)。参考までに引用しました。

(1) 世の中の「創造」の定義

 右図に挙げた文献を用い、世の中の創造の定義を、①弊社に都合の良い定義、②弊社に必ずしも都合の良くない定義、③面白いとは思うが良く分からない定義の三種類に分類して集めました。

 多くの専門家は、有用性や価値を前面に出した定義を挙げています。

(2) 弊社の「創造」の定義の特徴

 解釈の余地が無いように、「二段階(以上)の発明/発見/具体化を経る」というプロセスの形で「創造」を定義しました(第四章参照)。

① 二段階(以上)の発明/発見/具体化を経る。  

② 深部潜在概念にたどり着く。 

③ 技術分野においては、技術的思想を実証する。

 なお、言葉による以下の定義も用意しました。

未知の糸口の発見あるいは発明から、全く新しいものを創り出す

(3) 「創造」の定義の比較

 弊社は、「創造」と「実現プロセス」を合わせて、「創造&実現プロセス」と呼ぶことにします。 

 弊社は、この「創造&実現プロセス」が、多くの専門家の提唱する有用性や価値を前面に出した「創造」に相当するものと考えます。                         

(4) 「創造」に関連して、弊社が勝手に作った、世の中には無い定義